足の多いものが、思ったよりずっと速く、壁ぎわを走っていく。ムカデの夢には独特の驚きがあります。ヘビのようなゆっくりした恐れではなく、ぞわりとする一瞬の衝撃と、この虫は噛むのだという知識です。古い夢の書物のいくつかはこの虫に目をとめ、そして正反対の読みを残しました。
| 夢の場面 | 古い書物の読み | 出典 |
|---|---|---|
| ムカデを見る | 凶。俸給を失う、ただし商人は吉 | 『夢判斷實驗書』 |
| ムカデに噛まれる | 長寿 | 『周公解夢』 |
| 大量のムカデ | 悪人に取り巻かれる | 『夢判斷』 |
| 大きなムカデ | どの書物にも項目なし | なし |
| ムカデを殺す | どの書物にも項目なし | なし |
夢占いの古典では、ムカデの夢はどう読まれてきたのか
明治の夢判断書、柄澤照覺の『夢判斷實驗書』(明治41年)は、蜂や蝶、蜘蛛の項と並べて、ムカデに一行を当てています。「○蜈蚣をみれば凶俸給を失ふの兆但し商人は吉」。ムカデを見る夢は俸給を失うしるしだが、商人にはよい、という読みです。中国の『夢林玄解』を和訳した『夢判斷』(明治39年)には、群れの夢がひとつだけ載っています。
中国の古典『周公解夢』は、まったく違う方を向いていました。虫の夢を並べた節に「蜈蚣咬人壽命吉」とあり、ムカデが人を噛む夢を長寿のしるしと読んでいるのです。反対に、古代ギリシャのアルテミドロスは、毒蜘蛛やサソリと一緒に、ムカデを悪人のしるしと読みました。西洋のミラーの夢事典(1901年、米国)には、ムカデの項目そのものがありません。古い記録は少なく、しかも割れています。以下では、読みのあるところは紹介し、ないところはそう書いたうえで、心理学の見方を添えます。
ムカデは何をしたか
ここで紹介するのは古い夢の書物の読みで、歴史として伝えるものです。夢は未来を予言しません。
ムカデに噛まれる夢の意味は?
手や足に焼けるような痛みが走り、長い体はもう見えない。中国の古典『周公解夢』は、ムカデが人を噛む夢を長寿のしるしと読みました。虫に刺される夢を並べた節の中でも、とりわけ意外な一行です。ムカデを悪人と読んだアルテミドロスとは、正反対の向きです。心理学では、小さな裏切りとして読まれることがよくあります。見ていなかったところから受けた、思いがけない痛みです。
ムカデを殺す夢の意味は?
スリッパを振り下ろす、熱湯をかける。ムカデを殺す夢の項目は、このページで引くどの書物にもありません。心理学では、たいていは安堵の夢です。ようやく片づけた脅威、そしてときには、それにどれほどの力が要ったかへの後味も混じります。長く引きずっていた問題に向き合った週のあとに見ることが多い夢です。
大きさと数
大きなムカデの夢の意味は?
腕ほどもある長さで、水のようにうねって進む。大きなムカデと小さなムカデを分けて読んだ書物は、このページで引くなかにはありません。心理学では、大きさは重さとして読まれます。目覚めている間の頭の中で、その心配がどれほど場所をとるようになったかに合わせて、夢の中で大きく育った不安です。
大量のムカデの夢の意味は?
床下から、壁から、四方から一度に這い出してくる。『夢判斷』は「蜈蚣百數集于左右」の項で、ムカデが前後左右に百匹以上集まる夢を、悪人に身を取り巻かれるしるしと読み、心を正しくし身を慎んでいれば難はないと添えました。心理学では、数は圧力として読まれます。どれも決定的ではないけれど、どれもすぐ近くにある、小さな脅威の多さです。
心理学では、ムカデの夢をどう読むのか
心理学では、虫や這う生きものの夢はよく「侵入」として読まれます。招いていないのに入り込み、目を離したすきに増えていくものです。夢の中の嫌悪感にも意味があります。ムカデはそこに「刺す」ことを加え、サソリの夢に近づきます。小さく正確な何かに、多くは人に傷つけられる不安、そしてときには、自分の中の、いつでも刺し返せる構えです。
速さも大切です。ムカデは目で追いにくく、夢には、見張りきれない脅威の感覚が残ります。目覚めている暮らしで問うべきは、何がすき間から入り込んできているのか、そしていま誰をいちばん注意して見ているのか、ということが多いのです。虫の夢やサソリの夢もあわせてどうぞ。
心に留めておきたい問い
念のためにと、いつも横目で見張っている人や出来事はありますか。
『周公解夢』はムカデに噛まれる夢を長寿と読み、明治の夢判断書は俸給を失うしるしと読みました。けれど、あなたのムカデがいつも子どものころの部屋の同じ隅から出てくるのはなぜか、それは古い書物には書かれていません。Dreamlockは、iPhone向けのプライベートな夢日記アプリで、App Storeで配信中です。吹き込んだ夢を、古い書物の読み、心理学の見方、ひとつの問いから読み解きます。未来を占うことはしません。