扉が閉まり、床が足の裏を押し上げ、階数の表示が数えはじめる。エレベーターは動く小さな部屋で、その夢の多くは、部屋が言うことを聞かなくなる瞬間の夢です。落ちる、止まる、頼んだ階を通り過ぎる。自分は中にいて、ボタンはただのお願いにすぎません。

夢の場面 古い書物の読み 出典
エレベーターで上がる 地位と富への速やかな上昇 ミラーの夢事典
エレベーターで上がる エレベーターの項目はなし。はしごで天に上る夢は名と位がともに上がる 『夢判斷實驗書』
エレベーターが落ちる 下がる夢は、人をくじく不運 ミラーの夢事典
エレベーターが落ちる エレベーターの項目はなし。山に上って地に落ちる夢は位を失う 『周公解夢』
エレベーターに閉じ込められる 止まっているエレベーターを見る夢は、迫る危険 ミラーの夢事典
エレベーターが止まらない どの書物にも項目なし なし

夢占いの古典では、エレベーターの夢はどう読まれてきたのか

このサイトが引く明治の二冊、柄澤照覺の『夢判斷實驗書』(明治41年)と、中国の『夢林玄解』を和訳した『夢判斷』(明治39年)には、エレベーターの項目はありません。中国の古典『周公解夢』にもありません。どれも、昇降機が暮らしに入ってくる前の本です。

そのかわり、二冊には高く上る夢と落ちる夢があります。『夢判斷』は「扶梯上天」の項で、はしごによって天に上る夢を、名と位がともに上がり、世の栄華に臨むしるしと読みました。『夢判斷實驗書』もほとんど同じ言葉で「○梯子にのりて天に登るとみれば名位共に升りて榮華あるべし」と書いています。ところが同じ二冊は、舟や車に乗って天に上る夢には注意を添えました。『夢判斷實驗書』は、旅行の兆としながら「高きに上るにて危き意あり故につゝしむべし」と書いています。自分の足で上るはしごと、何かに運ばれて上る乗り物とで、読みが分かれているのです。エレベーターは、まさに後者です。

『周公解夢』には逆向きの一行があり、「昇山落地主失位」、山に上ってから地に落ちる夢を、位を失うしるしとしました。西洋では、ミラーの夢事典(1901年、米国)が、エレベーターがまだ新しい時代に「エレベーター(Elevator)」の項を立てています。上がる夢は地位と富への速やかな上昇、下がる夢は人をくじく不運、止まっているエレベーターを見る夢は迫る危険と、向きと動きで読み分けました。

エレベーターが落ちる・閉じ込められる夢

ここで紹介するのは古い夢の書物の読みで、歴史として伝えるものです。夢は未来を予言しません。

エレベーターが落ちる夢の意味は?

がくんと揺れ、どこか上のほうで何かが切れる音がして、床が足もとから抜けていく。エレベーターの夢のなかで、いちばん多く調べられている場面です。ミラーの夢事典は、エレベーターで下がる夢を、人をくじき落胆させる不運と読みました。『周公解夢』は、機械ではなく山の話として、上った末に地に落ちる夢を位を失うしるしとしています。心理学では、落ちる夢と同じように、支えを失う感覚として読まれます。エレベーターの場合は、安全なはずの箱の中で落ちる、という感覚が加わります。

エレベーターに閉じ込められる夢の意味は?

階と階のあいだで、箱ががたんと止まる。ボタンは反応せず、非常ベルは静けさに吸い込まれ、空気が少しずつ重くなっていきます。いちばん近いのはミラーの夢事典の一行で、止まっているエレベーターを見る夢を迫る危険のしるしとしました。心理学では、この形こそがいちばん多くを語るとされます。もといた場所には戻れず、行きたい場所にもまだ着かない、途中で止まった移り変わりです。一緒に閉じ込められていたのが誰かも大切な手がかりで、ひとりなら待つことの夢、職場の人や家族となら、止まってしまった共通の状況の夢として読まれます。

エレベーターで上がる・止まらない夢

エレベーターで上がる夢の意味は?

階数がどんどん増え、ガラスの向こうで街が遠ざかっていく。ミラーの夢事典は、エレベーターで上がる夢を、地位と富への速やかな上昇と読みました。『夢判斷實驗書』のはしごの読みも同じ方向ですが、高く運ばれることへの注意は、エレベーターにもそのまま当てはまります。力を使わずに上がれるぶん、つかまるものもないからです。心理学では、運や気分が上向く感覚として読まれ、そのときの気持ちに目を向けます。高揚とめまいは、同じ一回の上昇の中でよく混ざり合います。

エレベーターが止まらない夢の意味は?

自分の階を過ぎ、最上階も過ぎて、まだ上がり続ける。あるいは地下を過ぎて、建物にあるはずのない階へ沈んでいく。この場面の項目は、どの書物にもありません。現代の読み方では、同意のないまま続く勢いの夢です。昇進や生活のペース、気分の浮き沈みが、自分の望んだところを越えて進んでいく感覚です。上へ止まらない夢には、自分の手に余る場所へ運ばれる不安が、下へ止まらない夢には、浮かび上がれない重さが映りやすいとされます。

心理学では、エレベーターの夢をどう読むのか

心理学では、エレベーターは「縦の気分」の乗り物として読まれます。立場の高さ、気持ちの高さ、心という家の階のあいだを、力を使わずに、けれど自分の意思とは関係なく動くものです。上昇や急降下は、運や気分の同じ動きを映し、階と階のあいだで止まる夢は、途中で止まった移り変わりを映すとされます。誰が一緒に乗っているかも、多くの場合、大事な意味を持ちます。

エレベーターと対になるのが階段です。階段は自分の力で一段ずつ進む変化を、エレベーターは自分に起こる変化を運びます。だからこの夢は、新しい役割や急な自信の落ち込み、関係の「階」が変わるときなど、自分で動くより速く上下させられている時期に見やすいのです。夢の中で行こうとしていた階を覚えていれば、それがいちばんはっきりした手がかりになります。空を飛ぶ夢もあわせてどうぞ。

心に留めておきたい問い

いま、あなたを上へ、あるいは下へ運んでいるものは何でしょうか。そして、そのボタンを押したのは自分だったでしょうか。


明治の夢判断書は、はしごで上る夢と、乗り物で運ばれて上る夢とを読み分けていました。あなたのエレベーターがいつも最初の職場の廊下に開くのか、決断を迫られている週にだけ止まるのかは、夢を書き留めて並べてみてはじめて見えてきます。Dreamlockは、iPhone向けのプライベートな夢日記アプリで、App Storeで配信中です。吹き込んだ夢を、古い書物の読み、心理学の見方、ひとつの問いから読み解きます。未来を占うことはしません。