体がふわりと浮き、屋根を見下ろしながら空を進んでいく。気持ちのよさが残る夢ですが、明治の『夢判斷實驗書』は、飛ぶ夢を手放しでは喜んでいませんでした。
| 夢の場面 | 古い書物の読み | 出典 |
|---|---|---|
| 高く飛ぶ | 夫婦の災難、翼なしなら危険と恐れ | ミラーの夢事典、アルテミドロス |
| 低く飛ぶ | まっすぐ立って低く飛べば幸運 | アルテミドロス |
| 天に昇る | 官位を得る | 『夢判斷實驗書』 |
| 翼で飛ぶ | 身に翼が生えれば「吉」、金銭の利 | 『夢判斷實驗書』、アルテミドロス |
| 鳥と一緒に飛ぶ | 鶴に乗って天に昇れば長寿 | 『夢判斷實驗書』 |
| 街を見下ろして飛ぶ | 旅のしるし、景色で旅の良し悪しを読む | アルテミドロス |
| うまく飛べない | 飛ぶ夢の中でいちばん悪い | アルテミドロス |
| 飛んでいて落ちる | 没落、途中で目覚めれば立て直す | ミラーの夢事典 |
夢占いの古典では、空を飛ぶ夢はどう読まれてきたのか
このページでは、日本の夢占い(夢判断)の古典として明治の夢判断書と、西洋の古い夢判断の書を引きます。柄澤照覺の『夢判斷實驗書』(明治41年)は天文の項に空の夢をまとめていて、「○風にのりて空をかけると見れば人に欺かるゝことあり」と書いています。風に乗って空を駆ける夢は、人にだまされることがある、という意味です。一方で『夢判斷實驗書』は、天に登る夢や鶴に乗って天に上る夢には、出世や長寿を読みました。
西洋でいちばん詳しいのは、アルテミドロス『夢判断の書』(2世紀)の飛ぶ夢の章です。アルテミドロスは、地面からあまり高くないところを、まっすぐ立った姿勢で飛ぶ夢を幸運とし、高く上がるほど、下を歩く人々より上に立つと読みました。米国の夢占い本『黄金の輪』(1862年)は、飛ぶ夢をたいへんよいしるしとして、条件をつけていません。
どのくらいの高さを飛んだか
ここで紹介するのは、古い夢の書物に残る読みを、歴史の記録として伝えるものです。夢が未来を予言することはありません。
高く飛ぶ夢の意味は?
雲の近くまでぐんぐん上昇していく、爽快な夢です。ところが本の読みはここで一気に厳しくなり、『夢判斷實驗書』(明治41年)は、空に上って雲を突き抜けていく夢を、死が近いしるしとするきびしい一行を残しました。ミラーの夢事典(1901年、米国)も高く飛ぶ夢を夫婦の災難と読み、アルテミドロス『夢判断の書』(2世紀)は、翼なしに空高く飛ぶ夢を危険と恐れのしるしとしています。現代の読み方では、高く飛ぶ夢は大きな目標や高揚感の表れで、命にかかわる知らせとは考えません。
あなたの夢は少し違いましたか? Dreamlockは、あなたが実際に見た夢を読み解きます →
低く飛ぶ夢の意味は?
地面すれすれを、滑るように飛んでいく夢です。アルテミドロス『夢判断の書』(2世紀)は、地面からあまり高くないところを、まっすぐ立った姿勢で飛ぶ夢を幸運のしるしとしました。高く飛ぶ夢を危ぶんだ本が多いなかで、低く飛ぶ夢は穏やかに読まれています。心理学では、自由への憧れと慎重さが同居している状態として読まれます。
天に昇る夢の意味は?
体が空へ吸いこまれるように、まっすぐ天へ昇っていく夢です。明治の夢判断書『夢判斷實驗書』(明治41年)は、夢の一覧のいちばん初めに「○天に登ると見れば官位を得るなり」を置いています。天に登る夢は官位を得るしるしだ、という意味です。心理学では、上を目指す気持ちの表れと読まれます。
どうやって、どこを飛んだか
翼で飛ぶ夢の意味は?

背中に翼が生え、鳥のように羽ばたいて飛ぶ夢です。『夢判斷實驗書』(明治41年)は「○身に羽翼を生ずるとみれば吉金錢の利あるべし」と書いています。体に翼が生える夢は吉で、金銭の利がある、という意味です。ただしその翼で天まで飛んでいくと、事を急ぎすぎて後悔する、とも書き添えました。アルテミドロス『夢判断の書』(2世紀)は、翼で飛ぶ夢を誰にとってもよいしるしとし、貧しい人は財を、力ある人は権勢を得ると読んでいます。心理学では、翼は自分の力で自由を手に入れる感覚の象徴です。
鳥と一緒に飛ぶ夢の意味は?
鳥の群れと並んで、あるいは大きな鳥の背に乗って空を飛ぶ夢です。明治の夢判断書『夢判斷實驗書』(明治41年)は「○鶴にのりて天に上るとみれば長壽の兆」と書いています。鶴に乗って天に上る夢は長寿のしるしだ、という意味です。心理学では、仲間とともに目標へ向かう感覚として読まれます。
街を見下ろして飛ぶ夢の意味は?
眼下の街並みを地図のように見下ろしながら飛ぶ夢です。アルテミドロス『夢判断の書』(2世紀)は、地上のものが見分けられる高さを飛ぶ夢を旅のしるしとし、下に見えた景色から旅を読めると書きました。平野や明るい海ならよい旅、谷や岩や激流なら困難な旅です。ミラーの夢事典(1901年、米国)は、飛びながら下に緑の木々を見る夢を、一時の困惑のあとに繁栄が押し寄せるしるしと読みました。心理学では、見下ろす夢は、物事を一歩引いて全体から眺めたい気持ちの表れです。
うまく飛べない夢
うまく飛べない夢の意味は?
飛ぼうとしても体が浮かない、もどかしい夢です。アルテミドロス『夢判断の書』(2世紀)は、飛びたいのに飛べない夢を、頭を地に向け足を空に向けて飛ぶ夢と並べて、飛ぶ夢の中でいちばん悪く不運な夢と呼び、たび重なる不運のしるしとしました。心理学では、思うように進まない焦りを映すと読まれます。
あなたの夢は少し違いましたか? Dreamlockは、あなたが実際に見た夢を読み解きます →
飛んでいて落ちる夢の意味は?

気持ちよく飛んでいたのに、急に力が抜けて落ちていく夢です。ミラーの夢事典(1901年、米国)は、飛んでいる途中で落ちる夢を没落のしるしとしながら、すぐ次の文で、落ちている途中で目が覚めるなら立場を立て直すことに成功する、と読みを救っています。心理学では、自信が急に揺らぐ瞬間を映すと読まれます。
あなたの夢は少し違いましたか? Dreamlockは、あなたが実際に見た夢を読み解きます →
追われて飛んで逃げる夢の意味は?
何かに追いかけられ、地面を蹴って空へ逃げる夢です。アルテミドロス『夢判断の書』(2世紀)は、飛んでいるときに獣や人、あるいは霊に追われる夢をよくないものとし、大きな恐れと危険を呼ぶと読みました。心理学では、追われる夢は、避けている問題やプレッシャーから逃れたい気持ちの表れとして読まれます。
心理学では、空を飛ぶ夢をどう読むのか
心理学では、飛ぶ夢はよく自由や解放の象徴として読まれ、現実の重荷から離れたい気持ちや、自分の可能性を試したい気持ちの表れと考えられてきました。
ただ、飛ぶ夢は二つの顔を持っています。気持ちよく飛べる夢は自信や高揚感と、うまく飛べない夢や落ちる夢は、コントロールを失う不安と結びついています。アルテミドロスが飛ぶ高さや姿勢で読みを分けたように、細部で意味が変わると考える点では、古い書物と心理学は同じところを見ています。
心に留めておきたい問い
もし何の制約もなく飛べるとしたら、いまのあなたは、どこへ向かいたいでしょうか。
アルテミドロスは、飛んだ高さや姿勢だけでなく、眼下に見えた景色からも夢を読みました。屋根すれすれだったのか、雲の上だったのか。下に広がっていたのが海か、街か、森かも、目覚めてすぐなら思い出せるはずです。Dreamlockは、iPhone向けのプライベートな夢日記アプリで、App Storeで配信中です。吹き込んだ夢を、古い書物の読み、心理学の見方、ひとつの問いから読み解きます。未来を占うことはしません。
