しなやかな体、低いうなり声、こちらを見つめる金色の目。虎の夢には、怖さと美しさが同じだけ詰まっています。その虎を、明治の『夢判斷實驗書』とミラーの夢事典はまるで違う目で見ていました。
| 夢の場面 | 古い書物の読み | 出典 |
|---|---|---|
| 虎に襲われる | 失敗が暗い影を落とす(退ければ大成功) | ミラーの夢事典 |
| 虎が逃げる | 反対を乗り越え、高い地位にのぼる | ミラーの夢事典 |
| 虎が家に入ってくる | 官職を得るしるし | 『夢判斷實驗書』 |
| 野にいる虎 | 林から出る猛虎は立身のしるし(旅人には災い) | 『夢判斷實驗書』 |
| 檻の中の虎 | 敵のたくらみをくじく | ミラーの夢事典 |
| 白い虎 | 武将になる、あるいは死のしるし | 『夢判斷實驗書』 |
| たくさんの虎 | 二頭の虎が争う夢は争いごとのしるし | 『夢判斷實驗書』 |
夢占いの古典では、虎の夢はどう読まれてきたのか
このページでは、明治の夢判断書『夢判斷實驗書』(明治41年)を中心に引きます。この本の「動物類」は麒麟のすぐあとに虎を置き、「○虎をみれば百事に利あり婦人は豪傑の子を得るの兆」と書き出しています。虎を見れば何ごとにも利があり、女性は豪傑の子を得る、という意味です。家に入ってくる虎にも、林から出てくる猛虎にも、この本は地位や出世を読みました。
西洋の本は、虎をずっと警戒して見ていました。ミラーの夢事典(1901年、米国)は、迫ってくる虎を敵に苦しめられるしるしとし、よい読みは虎を退けたときや、檻の中の虎を見たときに限っています。虎を力の象徴として敬うか、危険な獣として恐れるか。その違いが、読みの違いにそのまま表れています。
虎に襲われる・追われる夢
ここで紹介するのは、古い夢の書物に残る読みを、歴史の記録として伝えるものです。夢が未来を予言することはありません。
虎に襲われる夢の意味は?
牙をむいた虎が、目の前で飛びかかってくる。虎の夢の中でもとくに強烈な場面です。明治の本に襲われる場面の項目はなく、手がかりは西洋の本です。ミラーの夢事典(1901年、米国)は、虎に襲われる夢を失敗が暗い影を落とすしるしとしながら、虎を退けたり倒したりできれば、あらゆる企てが大きく成功すると読みました。米国の夢占い本『黄金の輪』(1862年)は、怒り狂う虎を、評判を危うくする裏切りの友のしるしとしています。心理学では、襲ってくる虎は、手に負えない怒りや、強い立場の誰かへの恐れの姿と読まれます。
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虎に追いかけられる夢の意味は?
振り返るたびに、虎との距離が縮まっている。明治の本にも西洋の本にも、虎に追われる場面の項目はありません。心理学では、追いかけられる夢は向き合うのを先延ばしにしている問題の姿とされ、追ってくるのが虎なら、その問題は自分より強く、正面からは太刀打ちできないと感じているものかもしれません。
虎が逃げる夢の意味は?
こちらをひと目見た虎が、背を向けて去っていく。ミラーの夢事典(1901年、米国)は、自分から逃げていく虎を、反対を乗り越えて高い地位にのぼるしるしと読みました。ミラーの虎の項にある、数少ないよい読みのひとつです。心理学では、恐れていたものが自分から離れていく夢は、問題が思ったほど大きくなかったと気づき始めた状態として読まれます。
虎がいた場所
虎が家に入ってくる夢の意味は?
玄関から、あるいは窓から、虎がするりと家の中に入ってくる。明治の夢判断書『夢判斷實驗書』(明治41年)は「○虎家の中に入るとみれば官職を得るの兆」と書き、官職を得るしるしと読みました。家に猛獣が入る場面に、脅威ではなく地位を読んでいるのが、この本らしいところです。心理学では、家は自分自身の象徴で、家の中の虎は、自分の中に芽生えた強さや、家族の中の力関係を映すと読まれます。
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野にいる虎の夢の意味は?

森や草原を、虎が悠々と歩いている。『夢判斷實驗書』は「○猛虎林より出づるとみれば立身の兆但し旅行するものは災あるの兆」と書き、林から出てくる猛虎を立身のしるしとしながら、旅に出る人には道中の災いと、読みを分けました。心理学では、自由に歩く虎は、まだ飼いならされていない自分の力や野心の象徴とされます。
檻の中の虎の夢の意味は?

動物園の檻の向こうで、虎が行ったり来たりしている。明治の本に檻の虎の項目はなく、ミラーの夢事典(1901年、米国)が、檻の中の虎を見る夢を、敵のたくらみをくじくしるしと読みました。閉じこめられた虎は、抑えこめる相手の姿というわけです。心理学では、檻の中の虎は、自分で抑えている怒りや情熱として読まれることもあります。
どんな虎だったか
白い虎の夢の意味は?

雪のように白い虎は、夢の中でも特別な存在です。白虎を西の方角を守る四神のひとつとして知る人も多いでしょうが、それはここで引く夢の書物の読みではありません。『夢判斷實驗書』は「○白虎をみれば武將となり或は死亡の兆」と書き、武将になるか、あるいは死のしるしかと、正反対の二つの読みを一行に並べました。どちらになるかの見分け方は書かれておらず、百年以上前の本の、答えの出ない一行として読むのがよさそうです。心理学では、白い虎は、近寄りがたい気高さや、特別な力への憧れと重ねて読まれます。
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たくさんの虎の夢の意味は?
何頭もの虎に囲まれる夢は、一頭の虎とは違う緊張があります。『夢判斷實驗書』に群れの虎の項目はなく、いちばん近いのは「○二つの虎相鬪ふとみれば爭ひあるの兆」という、二頭の虎が争う夢を争いごとのしるしとした一行です。心理学では、たくさんの虎は、周りに強い人や手ごわい課題がいくつもある状態として読まれます。
子虎の夢の意味は?
ころころとじゃれ合う子虎は、怖さより愛らしさが残る夢です。子虎の項目は、明治の本にも西洋の本にも見当たりません。現代の読み方では、子虎は、まだ小さいけれどこれから大きく育つ力や計画の象徴とされます。守りたい気持ちになったのか、母虎が気になったのかでも、読みは変わってきます。
心理学では、虎の夢をどう読むのか
ユングは、夢に出てくる猛獣を、自分の中にある荒々しい本能の姿として読みました。虎はその代表で、怒り、情熱、野心といった、ふだんは抑えている強いエネルギーを映すと考えられています。
現代の読み方では、虎の夢は、その力と自分がどう付き合っているかを示すものとされます。襲われる夢なら、力に振り回されている感覚。家に入ってくる夢や、なつく夢なら、力を受け入れ始めている状態。『夢判斷實驗書』が虎に地位や出世を読んだのも、力そのものを悪と見なかった点で、心理学の見方と通じるところがあります。
心に留めておきたい問い
いま、あなたが抑えている強い気持ちがあるとしたら、それは檻の中にいるのでしょうか、それとも野を歩いているのでしょうか。
家に入ってくる虎に官職を読んだ明治の本と、迫ってくる虎に敵を見た西洋の本。どちらの読みに近いかは、夢の虎との距離で変わりそうです。虎は檻の中にいたのか、同じ部屋にいたのか、目が合ったのか。覚えている位置関係を、まず書き出してみてください。Dreamlockは、iPhone向けのプライベートな夢日記アプリで、App Storeで配信中です。吹き込んだ夢を、古い書物の読み、心理学の見方、ひとつの問いから読み解きます。未来を占うことはしません。
