ホームに滑り込む車両、閉まりかけるドア、ゆっくり動き出す窓の景色。電車の夢は、乗り物の夢のなかでもとりわけよく見られる夢です。そして電車には、時刻表があり、線路があり、行き先が決まっています。そのほとんどが、自分の手の中にありません。この夢を読む手がかりは、たいていそこから始まります。

夢の場面 古い書物の読み 出典
電車に乗る 電車の項目はなし。舟や車に乗って天に上る夢は旅行、ただし危うさもある 『夢判斷實驗書』
電車に乗る 走る列車を見る夢は、近く旅に出る ミラーの夢事典
電車に乗り遅れる 車両に乗り遅れる夢は、望みを進める試みがくじかれる ミラーの夢事典
満員電車 電車の項目はなし。人と同じ船に乗る夢は住まいの苦労 『夢判斷實驗書』
電車が事故に遭う 電車の項目はなし。船や車が砕ける夢は不吉 『周公解夢』
電車を乗り過ごす どの書物にも項目なし なし
知らない駅に着く どの書物にも項目なし なし

夢占いの古典では、電車の夢はどう読まれてきたのか

まずはっきりさせておくと、このサイトが引く明治の二冊、柄澤照覺の『夢判斷實驗書』(明治41年)と、中国の『夢林玄解』を和訳した『夢判斷』(明治39年)には、電車の項目も汽車の項目もありません。中国の古典『周公解夢』にもありません。いずれも、鉄道が夢の舞台になる前の読みを集めた本だからです。

そのかわり、二冊には舟と車の夢があります。『夢判斷』は「乘舟車上天」の項で、舟や車に乗って天に上る夢を、どこかへ行こうとするしるしと読み、そのうえで、むなしいものに乗って高みに上るのは危ういかぎりだと書きました。徳の高い人に導かれれば出世するが、そうでなければ身をあやまる、という読みです。『夢判斷實驗書』もこれを受けて、「○舟や車にのりて天に上るとみれば旅行の兆」と書き、高く上るのは危うい意味もあるから慎むべしと添えています。電車ではありませんが、自分で操っていない乗り物に、速く遠くへ運ばれていく不安は、同じものです。

西洋では、ミラーの夢事典(1901年、米国)が列車を知っていました。「列車(Train)」の項は、走る列車を見る夢を近く旅に出るしるしとし、貨物列車には身を高める変化を読んでいます。「鉄道(Railroad)」の項は、線路の夢を、商売に目を配るべき警告と読みました。以下では、書物が語るところはその読みを、黙っているところは近い項目を借りて紹介し、そのうえで心理学の見方を添えます。

電車に乗る・乗り遅れる・乗り過ごす夢

ここで紹介するのは古い夢の書物の読みで、歴史として伝えるものです。夢は未来を予言しません。

電車に乗り遅れる夢の意味は?

階段を駆け上がったとき、ちょうどドアが閉まる。明かりのついた車両が、目の前を離れていきます。ミラーの夢事典は、車両に乗り遅れる夢を、自分の望みを前に進めようとする試みがくじかれるしるしと読みました。心理学の読みも近く、閉じていく機会、誰かの時刻表で動いているチャンスを映すと考えられます。この夢は遅刻する夢の仲間で、問うべきは何に乗り遅れたかより、そのとき何を抱えていたかであることが多いのです。

電車を乗り過ごす夢の意味は?

ふと顔を上げると、降りるはずの駅はもう後ろにあり、次の駅は聞いたこともない名前です。乗り過ごす夢の項目は、このページで引くどの書物にもありません。心理学では、失敗というより注意のすきとして読まれます。よそ見をしているあいだに、暮らしの中の何かが先へ進んでしまった感覚です。焦りよりほっとした気持ちが残ったなら、本当は降りたくなかったのかもしれません。

満員電車の夢の意味は?

肩と肩が押し合い、座る場所も息をつく隙間もない。満員電車の項目はありませんが、『夢判斷實驗書』は船の夢として「○人と同船するとみれば住所につき苦勞あるべし」と書き、人と同じ船に乗る夢を住まいの苦労のしるしと読みました。中国の古典『周公解夢』も「與人同船主移居」、同じ場面を引っ越しと読んでいます。明治の本が中国の読みを受け継いでいることがよくわかる一行です。心理学では、満員電車は、人に囲まれすぎて自分の居場所が狭くなっている感覚として読まれます。

電車がどこへ向かったか

電車が事故に遭う夢の意味は?

車両が大きく揺れ、明かりが消え、前のほうで金属のきしむ音がする。電車の事故の項目は、どの書物にもありません。中国の古典『周公解夢』は「船車破碎主不祥」、船や車が砕ける夢を不吉としました。心理学では、勢いが狂う夢として読まれます。決まったレールの上を進んできた計画が、よけきれない何かにぶつかる感覚です。車の事故の夢も参考になります。

電車で知らない駅に着く夢の意味は?

ドアが開くと、見覚えのないホームと読めない駅名。降りるのは自分ひとりです。この場面の項目も、古い書物にはありません。現代の読み方では、迷子になる夢に近く、これまでの道が終わり、新しい道がまだ見えない移り変わりの時期を映すと考えられます。引っ越しや転職のあとに見る人も多く、そのとき感じたのが好奇心か不安かが、いちばんの手がかりになります。

心理学では、電車の夢をどう読むのか

心理学では、電車は、仕事や人生の時間割、すでに敷かれた進路など、レールの上を進む暮らしの部分を運ぶものとして読まれます。そこが、自分でハンドルを握る車の夢との違いです。電車では、選べるのは乗るかどうかと、どこで降りるかだけです。違う電車に乗ってしまう夢は、効率よく進んではいるのに、自分で選んだとは言いきれない方向へ向かっている感覚と結びつきやすく、乗り遅れる夢は、閉じていく窓の感覚と結びつきます。

この読み方でいちばん大切な問いは、そのレールを敷いたのは誰か、そしてそれがいまも行きたい場所へ続いているか、です。卒業前の一年、長い契約、何年も前に決めた計画など、予定の決まった時期に電車の夢は増えやすいとされます。夢の中で向かっていた駅と、そのときの気持ちが、電車そのものより多くを語ります。

心に留めておきたい問い

いまの暮らしのなかで、誰かが敷いたレールの上を走っている部分はどこでしょうか。そして今日もう一度、その切符を買うでしょうか。


明治の夢判断書は、舟や車で高く上る夢に旅と危うさを読みましたが、電車のことは知りませんでした。あなたの電車がいつも故郷の駅から出るのか、締め切り前にだけ現れるのかは、夢を書き留めて並べてみてはじめて見えてきます。Dreamlockは、iPhone向けのプライベートな夢日記アプリで、App Storeで配信中です。吹き込んだ夢を、古い書物の読み、心理学の見方、ひとつの問いから読み解きます。未来を占うことはしません。