関係が終わり、いまは昼より夜のほうがつらい。元恋人がまた去っていく夢、誰か新しい人と笑っている夢、もう存在しない家からただいなくなっている夢。元恋人が出てこない夜もあって、そこにあるのは追いかけられる場面、落ちていく場面、開かない扉だけ。心臓をどきどきさせて目を覚まし、喪失がもう一度、上から降ってくる。

短く答えるなら、失恋のあとの悪夢はよくあることで、たいていは心が難しい仕事をしている姿で、あなたのどこかがおかしいしるしではありません。終わりが受けとめられていくにつれて、落ち着いていく傾向があります。ここでは、なぜ悪夢が来るのか、たいてい何を運んでいるのか、そして何が助けになるのかを見ていきます。

別れはなぜ眠りにまで届くのか

別れが、ひとつだけの喪失であることはめったにありません。ひとりの人、ひとつの日課、いくつもの予定、ふたりだけの言葉づかい、ときには住まいや友人の輪までもっていきます。起きている心はそれを一度に受けとめる場所をつくらなければならず、その作業の多くが夜にあふれ出します。

ティファニー・フィールドらは2009年の研究で、最近別れを経験した大学生192人が、いまどれくらい苦しんでいるかを測りました。別れのつらさがもっとも強い学生は、頭から離れない考え、その考えを抑えることの難しさ、そして眠りの乱れについても高い得点を示していました。別れてからの期間が短いこと、拒まれた、裏切られたと感じていること、突然の予期しない終わりだったことは、どれもより強い苦しみと結びついていました。多くの人に覚えのある姿でしょう。昼に止められない考えが、夜に目を覚まさせる考えと同じなのです。

離婚を経験する人たちの夢を何十年も研究したロザリンド・カートライトは、夢そのものにもっと近いことを見いだしました。同僚との2006年の研究では、離婚の渦中にある人たちをレム睡眠から起こして、見ていた夢を報告してもらいました。起きているあいだに元配偶者のことで頭がいっぱいの人ほど、その元配偶者が夢に出てくる頻度も高かったのです。夢がその関心ごとを作り出したのではありません。続けていたのです。

悪夢がたいてい運んでいるもの

悪夢は筋書きではなく、感情で読んでください。失恋の悪夢の多くは、いくつかの感情のうちのどれかを、さまざまな場面に着せて運んでいます。

置いていかれる。 元恋人が去っていく、返事をしない、別の誰かと出ていく。とくに自分で選んだ終わりでなかったときには、拒まれたことをくり返しています。

裏切り。 関係が終わったあとでも、元恋人が浮気をしている夢を見るのはよくあることです。恋人に浮気される夢はたいてい、実際に起きた何かではなく、信頼や失う怖さについての夢で、別れのあとには、その怖さの行き場がはっきりしています。

顔のない脅威。 元恋人の夢はまったく見ず、追われる、閉じ込められる、迷うという夢を見る人も多くいます。追いかけられる夢は、ストレスが場面に変わった典型的なかたちです。何かが迫ってきて、逃げられない。別れのあとで振り切れないものは、たいてい感情そのものです。

罪悪感。 終わらせたのが自分なら、悪夢はこちらに向かってくるかもしれません。苦しむ元恋人、自分が責められる場面。それは心が難しい決断の重さを量っている姿で、決断を取り消しているのではありません。

元恋人の夢全般も同じしくみで、夢の中の元恋人は人物というより、その関係が抱えていたもの、そしてその終わりが奪っていったものの入れ物です。

夢がこれほど激しくなる理由

トア・ニールセンとロス・レヴィンが2007年に示した悪夢のモデルは、ふつうの夢が、怖い記憶から感情の強さを抜いていく手助けをしている、と考えます。心理学で「恐怖の消去」と呼ばれる過程に近いものです。ふたりの説明では、悪夢はその過程が手に負えなくなったときに起こります。感情が強すぎて落ち着かず、恐怖としてあふれ出して、目を覚まさせてしまうのです。ふたりはこれを確定した事実ではなくモデルとして示していますが、失恋のパターンにはよく当てはまります。最初の数週間は感情がもっとも強く、もっとも整理されていないので、夜もいちばん騒がしくなります。感情が落ち着くにつれて、夢もたいてい落ち着きます。

カートライトの研究は、希望の持てる一面も添えています。離婚の研究で、追跡調査の時点でうつ状態から回復しつつあった人たちは、元配偶者の夢が感情に富み、ほかの記憶とのつながりも多い傾向があり、うつ状態が続いていた人たちの夢は、より平板で、つながりの少ないものでした。カートライトはそこから何が言えるかについて慎重で、私たちもそうですが、元恋人についての鮮やかで感情的な夢が、それだけで悪いしるしではないことを示唆しています。それは乗り越えていく作業の一部なのかもしれません。

古い夢の書物は何と書いていたか

正直な報告は短くなります。このサイトが引くミラーの夢事典(1901年、米国)、『Ten Thousand Dreams Interpreted』には、別れた恋人の夢という項目も、別れのあとの悪夢についての記述もありません。いちばん近い場面は終わりの場面で、「Abandon」の項では恋人を捨てる夢を、失った貴重品を取り戻せないことと読み、「Divorce」の項では離婚する夢を、連れ合いへの不満と読みました。「Running」の項では、危険から逃げる夢を、損失の危険にさらされることと読んでいます。明治の夢判断書『夢判斷實驗書』(明治41年)にも別れた恋人の項目はなく、逃げる夢についてだけ、垣根を越えて逃げ走る夢を、憂いや疑いが起こる兆しと読んでいます。

ここでは、あなたの夜の読みとしてではなく、歴史として紹介しています。夢は人生や恋の行方を知りません。正夢・予知夢は本当にあるのかのガイドでは、夢が未来を告げているように感じられるのはなぜかを説明しています。

夜が落ち着くために

失恋の悪夢の多くは、とくに何もしなくても、ぽっかり空いたところのまわりに日々が組み直されるにつれて薄れていきます。その過程を少し後押しすることはできます。

眠りの骨組みをそろえておく。 別れは日課を壊します。夜更かし、不規則な食事、いつもより多いお酒、夜中の二時に昔のメッセージをさかのぼること。決まった時間に寝て、決まった時間に起きることは、生活のほかの部分に枠がないときにも、夜に枠を与えてくれます。

明るいうちに夢を書き留める。 悪夢を言葉にすると、その力が少し抜けます。さらに一歩進んで、新しい結末を書く人もいます。扉が開く、追跡が止まる、会話が自分の必要としていたとおりに進む。この種のリハーサルと、それがなぜ助けになることが多いのかは、悪夢のガイドで説明しています。

言えなかったことを、安全な場所で言う。 夢が同じ会話をくり返すなら、言えなかった言葉を書いてみてください。送る必要はありません。

夜の過ごし方に気をつける。 寝る直前に元恋人の写真やメッセージを見ると、夜に新しい材料を渡すことになります。最後の一時間をやさしく過ごすと、夢もやさしくなることがよくあります。

悪夢が続き、昼間もつらさが残るなら、信頼できる人に、あるいは医師に話してみる価値があります。このページは医療上の助言ではありません。

心に留めておきたい問い

もし悪夢が別れからひとつの感情を運んできていたのだとしたら、それはどの感情で、起きている生活のなかで、あなたがそれを声に出して言うのを誰かが聞いたことはあるでしょうか。


一般的な読み方で言えるのはここまでです。あなたの夜には、あなただけのパターンがあります。同じ家、同じ扉、振り返ると止まる追跡、つらい一日のあとにだけ現れる元恋人。そうしたパターンは、たくさんの夢をまとめて覚えていてはじめて見えてきます。Dreamlockは、そのためのiPhoneアプリで、App Storeで配信中です。吹き込んだ夢を聞き、絵にし、何がくり返し戻ってくるのかを覚えておくので、夜が静かになっていくのを確かめることができます。