黒い服、棺、線香の香り。そしてときには、これは自分の葬式だという妙な確信。葬式の夢は、目覚めて思い返すほど暗い夢ではないことが多いものです。古い夢の書物は、死そのものよりも葬式の場面に多くの行を割き、思いがけないところで読みを分けていました。

夢の場面 古い書物の読み 出典
死者を弔う よい夢 『夢判斷實驗書』『夢判斷』
葬式に行く 悪い夢、志が成らない 『夢判斷實驗書』『夢判斷』
葬列を送る 出費がかさむ 『夢判斷實驗書』『夢判斷』
自分の葬式 棺に入る夢は、不吉に見えて実はよい 『夢判斷』
親の葬式 喪に服す夢は、人の子にはやや不吉 『夢判斷』
知らない人の葬式 思いがけない心配ごと ミラー(1901年)
葬式で泣く 人と泣けば喜びごと、兄弟や友と泣けば別離 『夢判斷實驗書』
葬式で笑う 不吉 『夢判斷』

夢占いの古典では、葬式の夢はどう読まれてきたのか

日本の夢占い(夢判断)の古典として、このサイトは明治の二冊を引きます。柄澤照覺の『夢判斷實驗書』(明治41年)は、人事の項に「○死者を弔ふとみれば吉兆」「○葬式に行くとみれば凶兆」「○葬式を送るとみれば散財の兆」と、葬式の三つの場面を並べました。弔うことはよく、葬式へ向かうことは悪く、葬列を見送ることは出費だというのです。

この三行には元があります。中国の『夢林玄解』を和訳した『夢判斷』(明治39年)の「喪葬」の部に、同じ三つの場面が、もっと詳しい説明つきで並んでいるのです。同書は、喪に服す夢と人の死を弔う夢を「凡ての人に大吉」とし、葬式に行く夢を、志が成らず、商人は利を失い、病人は病が去らないと読みました。葬列を送る夢は「空しく費用を費やし」としています。悲しむことそのものは、夢としてはよいものだった。そこへ出向く用事のほうが、悪く読まれたのです。

西洋のミラーの夢事典(1901年、米国)は、葬式の多くを心配ごとや家族の悩みとして暗く読みました。ただ埋葬の項には、葬列に日が差していれば親族の健康と、ことによると結婚を読み、雨なら病と悪い知らせを読む、という一行があります。

誰の葬式だったか

ここで紹介するのは古い夢の書物の読みで、歴史として伝えるものです。夢は未来を予言しません。

自分の葬式の夢の意味は?

参列者の後ろから自分の葬式を眺めている。あるいは棺の中で、人々の話し声を聞いている。自分の葬式そのものの項目は、どの書物にもありません。いちばん近いのは『夢判斷』(明治39年)の棺の項で、自分が棺に入る夢を「不吉なる如くして然らず」、不吉に見えてそうではないと書き、官職に就く前触れと読みました。心理学では、ひとつの役割や評判、人生の一時期が葬られていく、自分のある姿の終わりとして読まれます。周りの人に自分がどう見えているのかを知りたい気持ちが、そこに混じることもあります。

親の葬式の夢の意味は?

まだ元気な親の場合もあれば、何年も前に亡くした親の場合もあります。『夢判斷』は喪に服す夢を、貴賤貧富を問わず誰にもよいとしながら、「人の子には此夢聊か不吉なり」と、子にとってはやや不吉だと書き添えました。西洋のミラーの夢事典は、親族の葬式を神経の疲れと家族の心配ごとと読んでいます。心理学では、生きている親の葬式の夢は、親との関係の形が変わること、とくに自分が自立していく過程を映すと考えられます。亡くなった親については亡くなった人の夢をどうぞ。

知らない人の葬式の夢の意味は?

誰が亡くなったのかわからないまま、参列者の中にいる。ミラーの夢事典はこの場面に一行を当て、見知らぬ人の葬式を思いがけない心配ごとと読みました。『夢判斷』は、棺を送る夢を亡くなった人の身分によって読み分け、高貴な人なら自分も貴くなる、と書いています。心理学では、見知らぬ人を、まだ知らない自分の一面と読みます。知らない人の葬式は、まだ名前のついていない何かの終わりかもしれません。

葬式で何をしていたか

葬式で泣く夢の意味は?

明治の夢判断書『夢判斷實驗書』は、人と泣き悲しむ夢を「喜びごとある兆」と読み、ただし兄弟や師や友と泣き悲しむなら別離のしるしだとしました。中国の古典『周公解夢』も「與人哭泣有慶賀」、人と泣く夢を祝いごとと読んでいます。一方で『夢判斷實驗書』には「○死人を見て泣くとみれば望み事成らず」という、少し寂しい一行もあります。心理学では、夢の涙は、起きている時間には居場所のなかった感情の表れと読まれます。夢の葬式で思いきり泣いたあと、不思議と軽い気持ちで目覚める人は多いものです。泣く夢もどうぞ。

葬式で笑う夢の意味は?

弔辞の最中に笑いがこみ上げて止まらない。『夢判斷』は、葬儀の式場で祭文を読み、焼香する夢を財を得るしるしとよく読みながら、「唯だ式場に臨んで笑ひ戯ける夢は不吉なり」と書きました。心理学はもう少しやさしく読みます。場違いな笑いは、安堵の表れや、思っているほど悲しくない終わりを映すことが多いのです。

心理学では、葬式の夢をどう読むのか

心理学では、葬式を、心が正式な別れの場を用意している姿と読みます。葬式の夢は、きちんと区切りをつけたい終わりの時期に現れやすく、棺の中にいるのは人ではなく、ひとつの時期や役割、以前の自分であることが多いのです。

参列のしかたも手がかりになります。落ち着いて参列していれば、受け入れが進んでいるしるしと読まれます。遅刻する、会場にたどり着けない、喪服が見つからない夢は、まだ心の準備ができていない終わりを映すと考えられます。葬式の夢は、実際に大切な人を亡くしたあとの数か月にもよく見られる、ごく普通の心の働きです。葬式の夢がつらい朝を何度も連れてくるようなら、信頼できる人に話してみるのもひとつの方法です。儀式のその先についてはお墓の夢もどうぞ。

心に留めておきたい問い

あなたの暮らしの中で、誰にも区切りをつけられないまま終わったものは何でしょうか。


明治の夢判断書は、弔うことをよしとし、葬式へ向かうことを悪く読みました。けれど、夢の葬式がなぜ母校の講堂で開かれていたのかは、どの書物にも書かれていません。夢の意味を読むこと自体に迷いがあるなら、夢占いはやめたほうがいい?にも正直な答えを書きました。Dreamlockは、iPhone向けのプライベートな夢日記アプリで、App Storeで配信中です。吹き込んだ夢を、古い書物の読み、心理学の見方、ひとつの問いから読み解きます。未来を占うことはしません。