石段、朱色の鳥居、鈴の音と、静けさのなかの二拍手。神社の夢は、何も起こらなくても不思議と落ち着いた夢で、目覚めたときに何かが決まったような気持ちが残ることがあります。そして神社は、日本の古い夢の書物がほとんど黙っていない数少ない夢のひとつです。明治の夢判断書は、神社と寺と神仏に、何頁もの項目を割いています。

夢の場面 古い書物の読み 出典
神社を見る 福が来て一家が栄える 『夢判斷實驗書』84頁
神社にお参りする 寺社に詣でるのは悪いことが身を去るしるし 『夢判斷實驗書』84頁
鳥居をくぐる 鳥居を見るのは吉、長命のしるし 『夢判斷實驗書』84頁
神社で結婚式 神社の婚礼の項目はなし なし
寺の夢 仏殿で礼拝するのは利益と長寿 『夢判斷』431頁
神様が出てくる 神に会うのは大吉、神が家に降りるのは凶 『夢判斷實驗書』80頁

夢占いの古典では、神社の夢はどう読まれてきたのか

柄澤照覺の『夢判斷實驗書』(明治41年)には「神佛類」という章があり、第54コマから第56コマ(80〜84頁)まで続きます。なかでも第56コマの84頁は、ほぼ一面が神社と寺の夢です。最初の一行は「○神社をみれば福來りて一家繁榮の兆」。同じ頁に「○神社佛寺を建立するとみれば大吉」「○伊勢の大廟に參拜するとみれば神の加護を得るの兆」「○繪馬をかくるとみれば運强きの兆」と続き、絵馬を掛ける夢まで項目になっています。

『夢林玄解』を和訳した『夢判斷』(明治39年)は、家屋部の「神社佛閣」の節(第240コマ、431頁)で、山や川の神々を祀る堂の夢を、神に信心の篤い人や心の正しい人にはよいとし、そうでない人にはかえって不吉と読みました。同じ夢でも、見る人の心がけで読みが変わったのです。中国の古典『周公解夢』では、神の廟が広く大きい夢は「神廟廣大事事吉」、何ごともうまくいくとされ、香を焚いて拝む夢は「燒香禮拜皆大吉」とされています。

面白いのは、『夢判斷實驗書』が自分と食い違っているところです。81頁では神事や祭礼を見る夢を「喜びごとあるべし」と読みながら、84頁では「○神事をみればわづらはしきことあり」と書いています。西洋のミラーの夢事典(1901年、米国)には神社の項目はなく、いちばん近い「仏塔(Pagoda)」の項は、待ち望んでいた旅と読んでいます。

神社を訪れる夢

ここで紹介するのは古い夢の書物の読みで、歴史として伝えるものです。夢は未来を予言しません。

神社にお参りする夢の意味は?

鈴を鳴らし、賽銭を入れ、二礼二拍手。『夢判斷實驗書』は「○寺社に詣づるとみれば惡事身を去るの兆」と書き、82頁でも「○神を拜し賽錢を奉るとみれば禍を去るの兆」としています。神に祈る夢も吉とされました。お参りの夢を、この本は災いを払う夢として読んでいたのです。心理学では、夢の中の祈りを、自分の力だけではどうにもならないと認める心の動きとして読みます。起きているときには助けを求めにくい人ほど、見やすい夢です。

鳥居をくぐる夢の意味は?

石段の上に鳥居が立ち、その下をくぐると、別の場所へ入っていくような感覚がある。『夢判斷實驗書』には「○鳥居をみるは吉長命の兆」という一行があります。くぐる夢そのものの項目はありません。心理学では、門や境目は移り変わりの象徴です。新しい段階に入ろうとしていて、その節目を意味のあるものにしたいときに見やすい夢とされます。

神社で結婚式をする夢の意味は?

赤い傘の下を進む花嫁行列、白無垢の花嫁。神社での婚礼の項目は、このページで引くどの書物にもありません。心理学では、場所も約束の一部と考えます。神聖な場所で交わす誓いは、本人が真剣に守りたい約束です。結婚の夢全体については結婚式の夢もどうぞ。

寺の夢、神様の夢

寺の夢の意味は?

香の匂い、薄暗い本堂、金色の仏像。『夢判斷』は、仏殿に上って礼拝する夢を「利福共に至り長壽の兆」と読み、寺に入る夢は普通の人にはよいが、身分の高い人には凶としました。『夢判斷實驗書』も、諸々の仏像を拝む夢を吉、仏と語り合う夢を「福祿至るの兆」としています。心理学では、寺も神社と同じく心の聖域で、静けさを探しに行く場所として読まれます。

神様が出てくる夢の意味は?

社の奥の気配、声、白い衣の姿。『夢判斷實驗書』は「○神に遇ひ又神と交際するとみれば大吉」と書く一方で、神のほうから会いに来る夢を凶とし、「○神の我家に降るとみれば凶親族に別るゝことあり」とも書いています。神と言い争う夢は、学問が進み良縁を得るしるしと、意外な読みです。心理学では、神のような存在を、本人の良心や、日々の都合より大きな何かに応えたいという願いとして読みます。

心理学では、神社の夢をどう読むのか

心理学では、神社や寺、教会の夢を「心の聖域」の夢として読みます。信仰の有無にかかわらず、日々の暮らしより大きな意味や秩序、つながりを求める時期に見やすい夢です。閉ざされた神社や荒れた社は、かつて暮らしを支えていたものから離れてしまった感覚を、見慣れた道で思いがけず社を見つける夢は、探してもいなかったところに意味が現れたことを映すとされます。

夢の中でしたことも手がかりになります。祈る夢は、努力ではどうにもならない状況とともに現れやすく、賽銭や絵馬、お辞儀のように何かを差し出す夢は、償いたい、きれいに出直したいという気持ちと重なることが多いのです。この夢の主題は、宗教そのものではありません。今の自分が大切にしているもの、ある人、ある約束、ある願いです。過去を弔うもうひとつの静かな場所については、お墓の夢もどうぞ。

心に留めておきたい問い

今夜、神社にひとつだけ願いか、ひとつだけお詫びを置いてくるとしたら、それは何でしょうか。


明治の夢判断書は、神社を見る夢を一家繁栄のしるしと読みました。けれど、見たこともない丘の上の小さな社になぜ何度も戻るのか、大きな決断の前にだけ現れるのかは、古い書物には書いてありません。夢の意味を読むこと自体に迷いがあるなら、夢占いはやめたほうがいい?にも正直な答えを書きました。Dreamlockは、iPhone向けのプライベートな夢日記アプリで、App Storeで配信中です。吹き込んだ夢を、古い書物の読み、心理学の見方、ひとつの問いから読み解きます。未来を占うことはしません。