世界が静かになる。音がやわらぎ、輪郭が消え、見慣れた道が知らない場所に変わる。雪の夢は怖い夢ではないことが多いのに、目が覚めても妙に残ります。その静けさのせいかもしれません。古い夢の書物も、天気の中では雪をとりわけ好意的に読み、身に降りかかったか、季節どおりか、溶けたかまで細かく見ていました。
| 夢の場面 | 古い書物の読み | 出典 |
|---|---|---|
| 雪が降る | 「苦勞を去るべし」 | 『夢判斷實驗書』 |
| 雪が降る | 時節どおりの雪は大いによい | 『周公解夢』 |
| 雪が身に降りかかる | 「事なるべし」 | 『夢判斷實驗書』 |
| 雪景色 | 清らかな雪なら喜びと楽しみ | 『黄金の輪』 |
| 大雪で閉じ込められる | 雪に埋もれかけた井戸は一家の不和 | 『夢判斷』 |
| 雪が溶ける | はじめに困難、のちに幸福 | 『夢判斷實驗書』 |
| 雪道で転ぶ | 雪の項目はなし。冬の氷で滑る夢は不運 | 『黄金の輪』 |
夢占いの古典では、雪の夢はどう読まれてきたのか
日本の夢占い(夢判断)の古典として、このサイトが引く明治の夢判断書、柄澤照覺の『夢判斷實驗書』(明治41年)は、「天文類」に雪の行を三つ置いています。「○雪ふりて身にかゝると見れば事なるべし」「○雪ふるとみれば苦勞を去るべし」「○雪紅なりと見れば命長し」。雪が降る夢は苦労が去るしるし、雪が身に降りかかる夢は物事が成るしるし、そしていちばん不思議な、紅い雪の夢は長生きのしるしでした。三つとも、やさしい読みです。
中国の古典『周公解夢』にも「雪落身上萬事成」、雪が身に落ちる夢はすべてが成るという行があり、明治の本はこれを下敷きにしたと考えられます。『周公解夢』は時期も重んじ、「雪下及時大吉利」と時節どおりの雪を大いによいとする一方、「霜雪降主事不成」と、霜や雪が降る夢を物事が成らないしるしとする行も並べています。同じ本の中でも、雪の読みは一枚岩ではありません。
中国の『夢林玄解』を和訳した『夢判斷』(明治39年)には、天象の部に雪の節がありません。そのかわり雪は思わぬところに出てきます。「雪を食ふ夢」は身分で読み分けられ、「貴人これを夢みれば高官に上り」、富者には安楽、ふつうの人には「諸國に浮浪する兆なり」とされました。
西洋の本は、もう少し冷ややかです。ミラーの夢事典(1901年、米国)は、雪を見る夢を、実際の不幸ではないものの病の気配や不満足な事業と読み、吹雪を楽しみにしていたことの失望と読みました。
雪は降っていたか、溶けていたか
ここで紹介するのは古い夢の書物の読みで、歴史として伝えるものです。夢は未来を予言しません。
雪が降る夢の意味は?
窓の外を舞う雪、街灯の光の中で濃く降りしきる雪。『夢判斷實驗書』は「○雪ふるとみれば苦勞を去るべし」と、降る雪を苦労が去っていくしるしと読みました。降った雪が自分の身にかかる夢は「事なるべし」、事が成るとされ、『周公解夢』の「雪落身上萬事成」とも重なります。心理学では、降る雪は静けさの訪れとして読まれます。小休止、やわらぎ、ときには人間関係や暮らしの一時期に冷えが降りてくる感覚です。
雪が溶ける夢の意味は?
軒からしずくが落ち、黒い土がのぞきはじめる。『夢判斷實驗書』は「○氷や雪のとけたるをのむとみれば先に困難して後に幸福を得るの兆」と書き、溶けた氷や雪を飲む夢を、苦労のあとの幸福と読みました。ミラーの夢事典も、雪が溶ける夢を恐れが喜びに変わることと読んでいます。心理学では、溶ける雪は、凍っていた気持ちが戻ってくる感覚として読まれます。
雪の世界
雪景色の夢の意味は?
野も屋根も地平線まで白く、誰も歩いていない。雪景色そのものの項目は明治の本にはありませんが、米国の夢占い本『黄金の輪』(1862年)は、清らかな白い雪に覆われた地面を喜びと楽しみと読み、汚れた雪やまだらに溶けた雪は、大事には至らない面倒としました。心理学では、何が隠されているかに目が向けられます。見慣れた土地がしばらく覆われ、やわらぎ、凍ったまま止まっている状態です。
雪道で転ぶ夢の意味は?
足がすべり、景色が傾き、強く尻もちをつく。雪道で転ぶ夢の項目は、このページで引くどの書物にもありません。いちばん近いのは『黄金の輪』の氷の項で、冬の滑りやすい氷の上で転ぶ夢を不運とし、なめらかに滑っていく夢は困難を乗り越えるしるしとしています。心理学では、足場を失う感覚として読まれます。安定していると思っていた状況が、実は足もとから危うかったと気づく夢です。
大雪で閉じ込められる夢の意味は?
戸が開かない。窓まで雪が積もり、誰も出入りできない。閉じ込められる夢そのものの項目はありませんが、『夢判斷』には「井が雪の爲に塡もれんとする夢」という珍しい行があり、「一家和合せずして分離し又は人に欺かるゝ兆なり」と読まれています。ミラーの夢事典は、雪に閉じ込められたり雪の中で迷ったりする夢を、不運が次々に押し寄せることと読みました。心理学では、孤立の感覚、あるいは長すぎる停滞を映すと考えられます。
心理学では、雪の夢をどう読むのか
心理学では、雪はよく心の静けさとして読まれます。雪の夢の世界は音が吸い込まれ、すべてが止まっています。その静けさは安らぎのこともあれば、人間関係や仕事、ある時期の暮らしに降りた冷たさのこともあります。多くの人が、見慣れた場所を雪が覆う夢を見ます。知っているものが一時的に隠され、やわらぎ、あるいは凍ったまま止まっているのです。
いちばん多くを語るのは、雪がどちらへ動いているかです。降る雪は小休止とともに、深く積もった雪は動けない時期とともに、溶ける雪は気持ちが戻ってくる時期とともに見やすいとされます。空から降るもうひとつの天気については雨の夢、水のさまざまな姿については水の夢もどうぞ。
心に留めておきたい問い
最近、静かになったものは何でしょうか。その静けさは、休息に近いでしょうか、それとも冷たさに近いでしょうか。
明治の夢判断書は、降る雪に「苦勞を去る」を読みました。けれど、なぜあなたの雪がいつも子どものころの家に降るのか、誰にも話していない決心のあとにだけ降るのかは、古い書物には書かれていません。夢の意味を読むこと自体に迷いがあるなら、夢占いはやめたほうがいい?にも正直な答えを書きました。Dreamlockは、iPhone向けのプライベートな夢日記アプリで、App Storeで配信中です。吹き込んだ夢を、古い書物の読み、心理学の見方、ひとつの問いから読み解きます。未来を占うことはしません。