地震の夢は、揺れの感触や物の落ちる音まで、体が覚えていることが多い夢です。地震の多い土地に暮らす人にとっては、とりわけ身近で、目覚めたあとも胸の鼓動がしばらく収まらないかもしれません。ところが明治の『夢判斷實驗書』は、この夢を意外なほど前向きに読んでいました。

夢の場面 古い書物の読み 出典
大地が揺れる 身分が変わり、「吉」 『夢判斷實驗書』
地割れが起きる 官位を得る(裂け目に落ちれば苦労) 『夢判斷實驗書』
地震で建物が倒壊する 飢え、戦、荒廃 『黄金の輪』
家にいる時に地震が起きる 公の用事や訴えごと 『夢判斷實驗書』
地震から逃げる 古い書物に項目なし(本文で現代の読み方を紹介) —

夢占いの古典では、地震の夢はどう読まれてきたのか

このページで中心に引くのは、日本の夢占い(夢判断)の古典、柄澤照覺の『夢判斷實驗書』(明治41年)です。この本は、「○」で始まる短い一行を分野ごとに並べた本で、地震の夢は天地や土地を扱う「地理類」に入っています。明治の夢判断書『夢判斷實驗書』は、大地が動く夢を身分の変化として「吉」とし、大地が裂ける夢には官位を読みました。揺れや裂け目を、崩れるものではなく、動き出すものとして読んでいるのです。例外は家が揺れる夢で、『夢判斷實驗書』はそこにだけ訴えごとを読んでいます。

西洋の本の読みは、もっと暗めです。米国の夢占い本『黄金の輪』(1862年)は、地震で町が倒れる夢に飢えと荒廃を読みました。明治の本にいちばん近いのは、古代ギリシャのアルテミドロスです。アルテミドロス『夢判断の書』(2世紀)は、大地が動く夢を、夢を見た人の暮らしや境遇に動きが生じるしるしと読み、旅に出たい人や借金を抱えた人には、かえってよい夢だとも書きました。遠く離れた二つの伝統が、揺れを「変化」と読むところで重なっています。

地震で何が起きたか

ここで紹介するのは、古い夢の書物に残る読みを、歴史の記録として伝えるものです。夢が未来を予言することはありません。

大地が揺れる夢の意味は?

足もとの地面が波打ち、立っていられなくなる。地震の夢でよく語られる場面です。明治の夢判断書『夢判斷實驗書』(明治41年)は「地の動くを見れば身分の變ずることありて吉」と書き、大地が動くのを見る夢を、身分や立場が変わるしるしとして「吉」としました。理由は添えられておらず、いつものように場面としるしを一行に並べているだけです。心理学から見ると、揺れる大地は、これまで当たり前だった土台が動き出している感覚と重ねて読まれます。怖いだけの揺れだったか、どこか解放感もあったかで、読み方は変わってきます。

地割れが起きる夢の意味は?

目の前で地面が裂け、暗い割れ目がのぞく夢です。『夢判斷實驗書』(明治41年)は「地の裂くるを見れば官位を得べし」、つまり大地が裂けるのを見れば官位を得るだろう、と書いています。ところが同じ本の隣の行は、その裂け目に自分が落ちる夢には、長引く病や住まいの苦労を読んでいて、見るか落ちるかで読みが逆になります。もちろん、これは明治の本がそう書いたという記録で、夢が体のことを言い当てるわけではありません。心理学では、地割れは、関係や計画に入った亀裂への気づきとして読まれることがあります。

地震で建物が倒壊する夢の意味は?

地震で建物が倒壊する夢:月明かりの広場で崩れ落ちた石のアーチと、そばでまだ灯っているランタンの絵
地震で建物が倒壊する

ビルや家が音を立てて崩れ、あたりが土ぼこりに包まれる。明治の夢判断書には建物が倒れる場面の項目がなく、手がかりは西洋の本です。米国の夢占い本『黄金の輪』(1862年)は、地震で町が倒れるのを見る夢を、飢えや戦、荒廃のしるしと読みました。アルテミドロス『夢判断の書』(2世紀)も、町が荒れ果てる夢をよいものとはしていません。心理学では、崩れる建物は、長く頼ってきた仕組みや自分の中の支えが持ちこたえられなくなっている感覚として読まれます。

家にいる時に地震が起きる夢の意味は?

家にいる時に地震が起きる夢:静かな居間で揺れる吊りランプと、壁を這い上がる細いひびの絵
家で地震が起きる

自宅の居間や寝室で、棚が鳴り、天井の照明が揺れ始める夢です。『夢判斷實驗書』(明治41年)は「地震して家動くとみれば公事訴訟のことあり」と書き、地震で家が揺れる夢を、公の用事や訴えごとが起こるしるしと読みました。この本の地震の項で、「地震」という言葉そのものが出てくるのはこの一行だけです。大地の揺れには出世を読んだ本が、家の揺れにだけ面倒ごとを読んでいるのは興味深いところです。心理学では、家は自分自身や家族の象徴とされ、家が揺れる夢は、いちばん安心できるはずの場所での落ち着かなさを映すと考えられます。

あなたの夢は少し違いましたか? Dreamlockは、あなたが実際に見た夢を読み解きます →

地震のなかで自分がしたこと

明治の夢判断書が記すのは、大地が揺れ、裂け、家が揺れるところまで。ここからは現代の読み方です。

地震から逃げる夢の意味は?

揺れのなかで階段を駆け下り、外へ飛び出す。避難する夢は、地震の夢のなかでも体の動きがはっきり残るものです。心理学では、逃げる夢は、迫ってくる変化や重圧から距離をとりたい気持ちの表れと読まれます。ただ、地震の夢で逃げる場面には、別の面もあります。とっさに体が動き、出口を探し、誰かの手を引く。それは、困った状況でも自分は動ける、という感覚の確認でもあります。どこへ逃げたのか、誰と一緒だったのかを思い出してみると、いま守りたいものの輪郭が見えてくるかもしれません。

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地震で助かる夢の意味は?

大きな揺れのあと、がれきの中から立ち上がり、自分が無事だと気づく夢です。現代の夢の読み方では、助かる夢は、厳しい時期をくぐり抜けつつある感覚や、揺さぶられても崩れなかった自分への気づきとして読まれることが多いです。目覚めたときの気持ちが安堵だったなら、心は「思ったより大丈夫だった」という体験を、夢の中でひとつ積み上げたのかもしれません。反対に、助かったのに不安が消えなかったなら、まだ片づいていない心配ごとが残っているとも考えられます。

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地震で生き埋めになる夢の意味は?

崩れたものの下で身動きがとれず、声も届かない。地震の夢のなかで、いちばん息苦しい場面です。心理学では、生き埋めになる夢は、仕事や責任、人間関係に押しつぶされそうな感覚、助けを求めたいのに言い出せない状態と重ねて読まれます。夢の中で誰かが掘り出してくれたのか、自分で抜け出したのか、それとも目覚めるまで動けなかったのか。その違いが、いまの自分がどこに助けを見つけられそうかを考える手がかりになります。

遠くの地震を見る夢

遠くの地震を見る夢の意味は?

自分のいる場所は揺れず、遠くの町が揺れているのを、テレビや高い場所から見ている夢です。現代の読み方では、この夢は、身近な人の変化や、ニュースで知った出来事への心配を、少し距離を置いて見つめている状態として読まれます。自分は無事なのに落ち着かない、何もできないもどかしさがある。そうした気持ちが、揺れる町を眺める形をとるのです。見ていた場所が、実家や知人の住む町だったなら、その人たちへの気がかりが夢に出てきたのかもしれません。

心理学では、地震の夢をどう読むのか

心理学の見方では、地震の夢の中心にあるのは「足もとが信じられなくなる」感覚です。フロイトは夢を抑えこんだ願いや不安の表れと考え、ユングは夢を、意識がまだ気づいていないことを知らせる心の働きと読みました。どちらの見方に立っても、地震の夢は、生活の土台が動いている時期に見やすいと考えられています。引っ越しや転職、家族の変化、あるいはまだ誰にも話していない決断などです。

地震の多い土地で暮らす人にとっては、事情がもう少し複雑です。実際の揺れの記憶や、備えなければという意識がふだんから心にあり、それが夢の材料になります。ですから地震の夢は、何かの前ぶれというより、すでに心の中にある緊張がとった形だと考えるほうが自然です。

細部も大切です。揺れたのは大地か、建物か、自分の家か。逃げたのか、立ち尽くしたのか、誰かを助けたのか。『夢判斷實驗書』が大地の揺れと家の揺れとで読みを変えたように、どこが揺れたかで意味が変わると考える点では、古い書物と心理学は意外に近いところにいます。

心に留めておきたい問い

いまの暮らしの中で、当たり前だと思っていたのに、最近少し揺らいで感じられる足場はどこでしょうか。


『夢判斷實驗書』は、同じ揺れでも大地なら身分の変化、家なら訴えごとと、揺れた場所で読みを分けました。夢の中で揺れていたのは足もとの地面だったのか、自分の部屋だったのか。棚の音や、とっさに誰の名前を呼んだかといった細部は、目覚めて数分で薄れてしまいます。Dreamlockは、iPhone向けのプライベートな夢日記アプリで、App Storeで配信中です。吹き込んだ夢を、古い書物の読み、心理学の見方、ひとつの問いから読み解きます。未来を占うことはしません。